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岩崎俊一さんのこと [生活]

東急電鉄のフリーマガジン『SALUS』。
毎号楽しみに最初に開くのは、
コピーライター岩崎俊一さんの連載エッセイ「大人の迷子たち」。

今月も20日発行サルースをラックから引き抜き、ペラペラとめくり・・・、
「あれ? ない。」

最後のページに、
岩崎俊一さんが急逝されたお知らせがありました。
一時病気のため休載され、待ち望んだ再開を果たしていたのに。

岩崎さんは、誰もが一度は聞いたことがある名コピーを数多く世に送り出したコピーライター。
「美しい50代がふえると、日本は変わると思う。」(資生堂)
「負けても楽しそうな人には、ずっと勝てない」
「人生は、冬ではなく、春で終わりたい」
・・・・好きなコピーです。

彼のエッセイは、ああ本当にそうよねと琴線に触れるものばかり。
言葉でうまく表現できなかった思いをピタッと表してくれた時には、目の前の靄がスッキリ晴れたり、時には、電車の中で目が潤んでしまったり。
ちょっといい話として人に伝えたいと思うものが、沢山ありました。

偶然残っていた昨年3月号の切り抜きから、
『不幸な体験は、ある日、財産に変わっている』。

レポーター等で活躍中のサヘル・ローズさんの壮絶な人生に触れていました。イラン・イラク戦争の激戦地で生まれた彼女が爆撃で家族を失い、瓦礫の中から助け出してくれた女子大生に育てられ、日本で受けた壮絶ないじめや貧困・・・その中から、人間として「階段」を上った瞬間のこと。
それに続く文章を一部抜粋させていただくと・・・

僕は昨年大病をした。治療生活はこれからも続く。元のからだに戻れたらと夢見ることもあるが、そんな自分でさえ、病気になる前の自分を思い返すといかにも物足りない。生や死について話しても、どこか上滑りなのだ。言葉は致命的に軽かったと思う。そして、病を得て身についた思考や、感慨や、新しい視野や、そして憂いさえも、以前の自分になかった貴重な持ち物だと、今の僕は考えている。
先日の新聞で、「災害や病気を体験した人とそうでない人とでは、人間の差が生じていると思います」という山田太一さんの言葉があった。僕は深くうなずくのである。

そしてサヘルローズさんの画面を通してのやさしさに言及し、

悲しみの海から彼女は多くの宝物を収穫した。母の献身の愛。小学校の先生の慈しみ。人の役に立つ嬉しさ。平和の歓び。平凡な一日のいとおしさ。それらは今揺るぎない資産となって、彼女の足場をガッチリと支えている。

・・・で閉めていました。

物事に対する思い、言葉を紡ぎだすプロの心掛けなど、きっとこの人は逢ってしゃべったら
愉しくて気が合う人に違いない、私より少し年上くらい?・・・とずうずうしく思っていたら、
結構年上のかたでした。
享年67歳。
いつまでも瑞瑞(みずみず)しくて、こうありたい。
そして、いつになったら揺らいでいる私の足場はガッチリとなるんだろ。
残念。

ご冥福をお祈りします。
連載を収録した『大人の迷子たち』が、昨年10月に刊行されています。





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